古河サポーターズ
古河大使・渡辺裕太さんと巡る古河。歴史、街の成り立ちから「こがでくらすと、ちょうどいい」を紐解く
「古河の魅力ってどんなところだろう?」暮らしの中では当たり前で気づきにくいけれど、外から見てみると...いろいろな分野の方にプロならではの視点で「こがでくらすと」を語っていただく企画の第3弾。今回は、古河市出身の俳優、故 渡辺徹さんのご子息で、2023年11月に古河大使に就任した渡辺裕太さんと古河の歴史に触れながら、"こがでくらすと、ちょうどいい"理由を紐解いていきます。
1989年3月28日生まれ、東京都出身。2023年から古河大使を務めている。
ポップンマッシュルームチキン野郎の劇団員、芸人とのコントユニット『わたなべやしき』の主宰、落語家・天狗連俳遊としてマルチに活動中。野菜ソムリエの資格を持ち、無類のパスタ好きでもある。
【テレビ】NTV『news every.』、『所さんの目がテン!』、テレビ岩手『5きげんテレビ』
【映画】2025年公開予定『囁きの河』、『SENSEKi』
【舞台】朗読劇『家庭内文通』、プリエール『マミィ』
渡辺裕太さん(以下、渡辺):古河には子どもの頃から家族でよく遊びにきているのですが、住んでいたわけではないのでまだまだ知らないこともたくさんあるはず。
今日は野菜がおいしいイタリアンも食べられるとのことなので、野菜ソムリエとしても本当に楽しみにしていました!
古河巡りを始める前に、まずは2023年からスタートしたブランド戦略『こがくらす』について渡辺さんと振り返ります。
市職員:市では、市民と市役所が一体となって"街の魅力を発見・再認"し、みんなで共有しながら発信する『こがくらす』というブランディング活動をしています。この活動のシンボルとして、2種類のロゴマークを作りました。また、いろいろな分野の方にプロならではの視点で古河の良さを語っていただくコンテンツ『古河サポーターズ』など、さまざまな形で古河の魅力を発信中です。
渡辺:ひらがなの『こ』の中に文字が入っているんですね。
市職員:そうなんです。1人ひとりが古河のいいところを見つけて表現するためのツールになれば、という想いからデザインしました。右側のロゴは『こ』の中に市民が感じる魅力を写真や文字で入れられるようになっています。
また、古河の魅力をInstagram上で発信する"こがキラphotoクラブ"のメンバーに協力をいただいて、市民目線を取り入れた『古河noトリセツ』という冊子を発行しています。その冊子の中では「こがでくらすと、ちょうどいい」という声が多く挙がっているんです。
渡辺:なるほど、確かに古河は"ちょうどいい"ですね。ちょうどいい自然にちょうどいいアクセス......。
市職員:渡辺さんは、お父さまの実家があるので子どもの頃からご家族で古河に来てくださっていたんですよね。今回は古河の歴史に触れる街巡りを通して、街の成り立ちやちょうどいい古河を知っていただければと思います。
ボランタリーガイド(以下、ガイド):本日案内をさせていただくボランタリーガイドの鎌田です。 よろしくお願いします。
古河桃むすめ(以下、桃むすめ):古河の魅力を伝える活動をしている桃むすめの阿部と近藤も一緒に巡らせていただきます!
渡辺:1日よろしくお願いします!
『古河駅から日光街道』で古河の"道"の歴史に触れる
最初に訪れたのは、古河駅西口から歩いて450mほどの場所にある『日光街道古河宿道標』です。
ガイド:日光街道は江戸から日光までを結んでいて、江戸時代には日光社参の通り道として歴代の将軍が通いました。街道は江戸から古河までを結び、この地点で左に日光道、右に筑波道と分岐していました。参拝者が迷わないように建てられたのがこの道標なんです。
渡辺:なるほど! ということは、江戸時代からある道標なんですね。夜でも見つけられるように、上の部分が常夜灯になっていますね。たくさんの人が歩いたんだろうなぁ。
ガイド:市民からも「アクセスがちょうどいい」という話はよく聞きますし、江戸時代からすでにその面影がありますよね。
渡辺:古河は都内へのアクセスが本当にいいですよね。新宿まで電車で1本だし、鎌倉や熱海に行けちゃうのもすごい!
桃むすめ:私たちも学校へ乗り換えなしで通えていて、日々便利さを感じています!
渡辺:若い人たちにとってもうれしいですよね。
桃むすめ:はい、うれしいです! ちなみに、この日光街道周辺は江戸時代から続くお祭り『古河提灯竿もみまつり』の会場にもなっています。20m近い竹竿の先に付けた提灯を激しくぶつけ合って火を消す珍しいお祭りで、『関東の奇祭』といわれています。古河では他にもお祭りやイベントがたくさんあって、私たち桃むすめも楽しく参加しています。
渡辺:『古河桃まつり』も有名ですよね! 昔おばあちゃんと一緒に行ったことがあります。これからは古河大使として、古河のお祭りやイベントでいろいろな四季を感じていきたいなぁ。
東京から埼玉を通り、栃木までをつなぐ日光街道。市民が生活で感じているだけでなく、人力で移動をしていた江戸時代から続く歴史を知ると感慨深いものがありますね。
『お休み処 坂長』で古河の"商い"の歴史に触れる
続いては日光街道から肴町通りに入った場所にある『お休み処 坂長』に立ち寄ります。ミニギャラリーやホール、飲食店や物販などを併設した市民の憩いの場です。
ガイド:『坂長』は、江戸時代から両替商を経て、その後酒問屋として栄えたお店です。今は旧古河城から移築された文庫蔵をはじめ、敷地内の5つの蔵を活かした施設になっています。
渡辺:こんなに渋い蔵が残っているなんてすごいですね......軒先も味がある。とても貴重な場所ですよね。
ガイド:古河には古い蔵がいくつも点在しています。先ほど日光街道は日光社参の通り道だったというお話をしましたが、実はここ一帯には古河城があったんです。城下町として栄え、日光街道と奥州街道の宿場町として利用された......と聞くと、どんな街が想像できますか?
渡辺:たくさんの人が行き交い、賑やかそうですね!
ガイド:その通り! ここは御馳走番所や使者取次所と呼ばれる各地の大名からあいさつを受ける場所で、多くの人々が行き交っていたようです。江戸時代から栄え続け、後に二丁目銀座通りとしてたくさんのお店が軒を連ねていました。お豆腐屋さんや川魚屋さんなどの個人商店や、小料理屋さんも多かったそうです。
渡辺:小料理屋さんが多いのは、城下町だったことが関係していそう。この地ならではの食文化もありそうですね。
ガイド:古河は利根川・渡良瀬川・思川の合流点でもあり、豊かな漁場に恵まれていたので、川魚を食べる文化があります。郷土料理でいうと鮒の甘露煮。伝統食でもあり、文化庁の100年フードにも選ばれました。栄養価が高く、小学校の給食にも出ます。
桃むすめ:私たちも給食で食べました! 1匹丸ごとなので最初はびっくりしましたが、甘くてやわらかく、とてもおいしいんです。
ガイド:古河には他にもたくさんの名産があるので、そちらも見てみましょう。
ガイド:店蔵の1階では古河の名産品や地元アーティストの作品を販売しています。人気商品はお野菜ですね。
渡辺:シソが100円! 安すぎる......シソってものすごく栄養価が高いんですよ。買っちゃおうかな......。
ガイド:さすが野菜ソムリエですね! あとは古河といえば傘の生産が有名です。戦後に洋傘産業が盛んになり、最盛期には70店舗以上の製造販売店がありました。今では1軒のみになってしまいましたが、こちらの傘は手づくりです。
桃むすめ:私たちも使っています!
渡辺:桃むすめの皆さんも使っているんですね! 傘が有名なのは、とっても意外でした。まだまだ知らないことがたくさんあるなぁ。
ガイド:店蔵を出ると石蔵というホールがあります。この蔵は暗くて音が響くので、映像を流したりジャズライブなども開催されています。
渡辺:とても立派な蔵ですね。うわ、すごい声が響く! 僕、落語家としても活動していて、ここで開催できたら最高だなぁ......。ちょっと本気で考えてみます!(笑)
古河の商いの歴史に触れながら、渡辺さんの新たな目標が見つかる素敵な蔵巡りになりました。
『古河第一小学校』で父の"人生"に思いを馳せる
渡辺さんと立ち寄ったのは、父・渡辺徹さんの母校である『古河第一小学校』。立派な赤レンガの門は通称『赤門』と呼ばれ、数多くの古河の子どもたちの成長を見守ってきました。
桃むすめ:私たちは古河一小卒業ではないのですが、おしゃれな赤門には子どもながらに憧れていました。お父さまが通われていた頃から、姿が変わっていないそうですよ。
渡辺:すごい立派ですね! この赤門を父がくぐっていたというのはエモい......。古河は昔からサッカーが盛んなんですよね。よく父に、選抜チームに入っていたことを自慢されてました(笑)
ガイド:徹さんと針谷市長は小学生時代にサッカーチームで対戦していたと聞きました。
渡辺:そうだったんですね! ここで元気に育ってくれたから今の僕がいると思うと、感慨深いです。
父・徹さんの思い出にも触れて、古河巡りの旅はいよいよ後半戦です。まだまだたっぷりと古河の歴史に触れていきます。
『鷹見泉石記念館』で古河の"偉人"の歴史に触れる
続いて訪れたのは、蘭学者 鷹見泉石(たかみせんせき)の晩年の住まい『鷹見泉石記念館』。古河藩が藩士たちのために用意した武家屋敷の一つで、江戸時代の大名 土井利勝(どいとしかつ)が古河城の余材を使って建てたと伝えられています。
ガイド:鷹見泉石は、江戸時代後期の蘭学者で、古河藩主の土井利厚(どいとしあつ)と利位(としつら)の家老として仕えていました。政治的な能力だけでなく本当に頭のいい方で、海外情報を集めてさまざまな地図や書籍などの資料を残しました。
渡辺:実は、父が生前から構想していた鷹見泉石の晩年を描いた映画『SENSEKi』に僕と母も出演しているのですが、本当にすごい方だったんですね。この土間でカステラを焼くシーンが映画にありました。
ガイド:泉石は蘭学に精通していたので、カステラやコーヒーなど当時ではかなり先進的な文化に触れていたようです。また、数多くの偉人と交流があったので、古河にもいろいろな文化や新しい物を運んできてくれたのではないでしょうか。
渡辺:なるほど! 僕が演じたのも「泉石にお世話になった父の道具を渡しに来る」という役でした。このように会いにくる人も多かったんでしょうね。
渡辺:それにしても、この建物本当に落ち着きますね......。古河ってちょうどいい自然があるけど、また少し違う感じ。空気感も変わって、タイムスリップした気分になります。
桃むすめ:私たちも初めて来たとき、びっくりしました。古河にもこんな場所があるんだって。まだまだ泉石のことを知らない市民の方もいると思うんですけど、レトロな雰囲気を味わうだけでもいいですし、少しでも興味を持ってくれるとうれしいです。
渡辺:2025年には映画も公開される予定ですしね。いろいろな方に鷹見泉石と古河の魅力を知ってもらうきっかけになればいいなと思います。
『古河歴史博物館』で古河の"街"の歴史に触れる
歴史的な景観と自然に癒されながら歩くと、すぐ近くにある『古河歴史博物館』に着きました。こちらでは鷹見泉石が収集・記録した蘭学関係資料や古河の歴史、奥原晴湖(おくはらせいこ)や河鍋暁斎(かわなべきょうさい)らの書画作品の紹介をしており、建物は日本建築学会賞、公共建築賞を受賞。以前、こちらの施設で館長を務めていた学芸員の説明を聞いてみます。
学芸員:ここからは、長く学芸員をしている立石が案内させていただきます。
渡辺:よろしくお願いします!
学芸員:まず、博物館のロビーに入ると大きな雪の結晶をモチーフにした装飾があります。古河では、雪の結晶のデザインが多く見られるのはご存知ですか?
桃むすめ:私たちの浴衣も雪の結晶のデザインです!
渡辺:本当だ。古河と雪の結晶には何か繋がりがあるんですか?
学芸員:古河藩主で老中を務めていた土井利位は、約20年に渡り雪の結晶を観察していました。その成果を『雪華図説』という科学書にまとめています。この本がきっかけで、江戸ではこの雪華の模様が流行していくんです。桃むすめさんたちの浴衣の模様も『雪華図説』に載っているものですね。公務の間を縫って利位が観察した雪の結晶の数は、183種類もあるんですよ。
桃むすめ:この浴衣のデザインにそんな歴史があったなんて知らなかったです......!
渡辺:なるほど。あと、古河に雪が降るほど寒いというイメージがなかったです。
学芸員:そうなんです。利位は古河のお殿様ですが、その一方で幕府の要職でもある老中を務めています。大坂城代や京都所司代だった頃に大阪や京都で雪の結晶を観察し、記録に残していたようです。
渡辺:そんなにすごいお殿様が古河にはいたんですね。
学芸員:古河には関東でも有数のお城があり、室町戦国時代は京の都に対して「東都」と呼ばれたところ。関東の将軍、古河公方足利氏が住む重要な場所だったんです。城を中心として街が形成され、江戸に入ると城下町として栄えて今の古河の基盤ができました。
渡辺:古河にそんなに立派なお城があるなんて知りませんでした。そもそも、どうして古河にお城が建てられたんですか?
学芸員:築城の理由は諸説あるのですが、古河は足利氏を支える豪族が周辺にあり、加えて立地上水運の幹線となる、大きな河川の合流点でもあったからといわれています。明治以降、古河の西を流れる渡良瀬川は、治水と利水のための渡良瀬遊水地造成と河川改修工事によって流路が変わり、古河城の主要部分は河川敷に沈んでしまいました。
渡辺:古河城がなくなってしまったのは悲しいけど、そのおかげで災害の少ない今の暮らしがあると思うと感慨深いですね。
ガイド:ちなみに、こちらの歴史博物館は古河城の一部である出城跡に建てられているんですよ。
渡辺:そうなんですか! 確かにさっき外を歩いていたらお堀があって、とても素敵だなと思っていました。古河城の景観が今でも残っているのはうれしいですね。
古河の街の基盤には、古河城の城下町として栄えた歴史があったというのには驚きでした。改めて古河の歴史を知ると、新しい視点を持って街を歩けそうですね。
『マタタビ食堂』で古河の"食"に触れる
史跡めぐりでたくさん歩き、お腹はぺこぺこ! 渡辺さんとランチに訪れたのは、古くから続く商家が使っていた蔵を改造して建てられた食の複合施設『みらい蔵』にある『マタタビ食堂』。
桃むすめ:マタタビ食堂では、地元野菜をたっぷり使ったイタリアンが楽しめます。ランチは野菜がたくさん楽しめる前菜と自家製ドルチェがついたCセットがおすすめです。
渡辺:野菜ソムリエになるぐらい野菜が好きなので、ぜひCセットをいただきたいです。パスタも選べるんですね。僕は塩オイルのパスタにします。
渡辺さんがオーダーしたのは、お店でも人気の高い『タコのラグーとセロリのスパゲッティ』。前菜がテーブルに届き、古河の野菜に詳しいオーナーの大井さんにもお話を伺いました。
オーナー:野菜は僕が直接農家に行って取り引きをしています。流通には乗らない少量生産や珍しい西洋野菜を作っている農家を応援したい気持ちが強く、お店で提供しています。
渡辺:僕も野菜ソムリエとして活動をしていく中で、流通がないけどとてもおいしい野菜を作っている農家さんにたくさん出会いました。自分らしい形で応援したいと思い、数年をかけてバーニャカウダソースの開発を続け、最近ようやく完成させました。
オーナー:素晴らしいですね。
渡辺:今後、古河の農家さんといろいろなことができるといいなぁ。今日はしっかり古河の野菜を味わいたいと思います!
渡辺:前菜もパスタもめちゃくちゃおいしいです。古河に来るとなじみの鰻屋さんなど決まったお店に足を運ぶことが多いのですが、今回このような出会いの機会をいただけて本当にうれしいです。古河の街もたくさん歩けたし、大満足です!
渡辺さんが古河散策で感じた"こがでくらすと"
1日古河を散策し、さまざまな歴史と暮らしに触れてきた渡辺さん。改めて古河を知り、どのようなことを感じたのでしょうか?
渡辺:古河の街を巡り、徒歩圏内にこんなにさまざまな歴史的建造物や文化的な場所があることに驚きました。江戸時代にタイムスリップをして、今ようやく戻ってきた気分です(笑)
僕にとって古河はおじいちゃんとおばあちゃんの家がある場所。しっかりと街を歩いたことがなかったので、こんなにも歴史のある土地なんだと本当に驚いています。
また、野菜ソムリエとして古河の野菜にもすごく興味があって......歴史や暮らしやすさ、食文化など古河の魅力を市内外の方にもっともっと知ってほしいし、発信していきたいと改めて感じる旅になりました。
今後もいろいろな活動をしていくので、ぜひ市民の皆さんも一緒に古河を盛り上げていきましょう!
今回、古河の「ちょうどいい」を紐解き分かることは、古河に生きたさまざまな人が時代に合わせた暮らしやすさをつくってくれたということ。長く暮らしたいと思える"ちょうどいい便利さ"と"ちょうどいいゆったり感"は、古河ならではの魅力ですね。
皆さんもぜひ古河の歴史を知って、自分の暮らしとのつながりを見つけてみてください。
【渡辺さんが訪れた古河のスポット】
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- 古河桃むすめ
- 古河市観光ボランタリーガイドのご案内
ボランタリーガイドが無料で古河を案内します。ぜひご予約ください。
- 「古河noトリセツ」
古河市の特徴や魅力が詰まったPR冊子『古河noトリセツ(取扱説明書)』。WEBからも読むことができます。
- 古河提灯竿もみまつり
古河桃むすめも自慢するお祭りは、毎年12月に開催されています。
- 古河の観光案内「こがナビ」
古河桃まつりやそのほかのイベント、観光スポットのご案内。古河桃むすめの活動もこちらでチェック。
編集・執筆/vivace
撮影/寺田拓真